—あんなに綺麗な人がこの世にいたなんて—
瞬の思考は完全に停止し、立ち尽くしたままそのまま動けずにいた。
もう何分もこうしているように感じられるし、まだ数秒しか経っていないような気もする。
今はいつ?
4月。最初の日曜日。明後日は大学の入学式。
ここはどこ?
東京ドームシティラクーア。東京ドームとドームホテルの中間地点。上京したばかりの僕が、親戚の叔父さん(巨人ファンだ)と食事をするための待ち合わせ場所。
ここまでは丸ノ内線で来た。
…だったはず。
ここまでは覚えている。
覚えているし、理解出来る。
東京ドームシティ中にアニメやマンガのコスプレをした男女がひしめいている。何かのイベントだろうか?
それも理解できる。
ただ、ひとつだけ現実とは思えない事がある。
中学生の頃、友人に勧められるまま渋々目を通し、それ以来夢中になってしまったラノベのヒロイン。
その憧れのヒロインが何故か目の前に居ることだ。
まるで、ラノベからそのままの姿で飛び出してきたように。
それが僕と彼女。そう、コスプレイヤー「あまね」との出会いだった。
この時の僕には思いもよらなかった。
東京に来たばかりの僕が、インターネット以外で初めて見たコスプレイヤーに目も心も奪われてしまうなんて。
そして、彼女の前で格好をつけるためについた些細な嘘のせいで、興味もなかったカメラを始める事になるなんて。
〜続く〜